中学受験会談!☆家庭教師&一流教師 対談シリーズ☆【家庭教師のセンセート】
インタビュー
2023/03/01

今回は中学受験のトップ教師対談。
代表の中西が業界の第一線で教える先生を招き、気づきを得るシリーズです。
尚、お相手は立場上匿名希望のため簡単な経歴をご紹介します。
○40代男性
○東京大学卒
○都内有名中学受験塾勤務
○長年、最上位クラスの算数を担当
※情勢を鑑み、対談はオンラインで行いました。
※便宜上、お相手の名前を遠藤様(仮名)としております(以下、敬称略)。
中西「本日は貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。」
遠藤「とんでもございません。こちらこそお話出来て光栄です。」
中西「こちらこそ、中学受験業界で第一線を走っておられる遠藤様とお話できて嬉しいです。早速本題に入りますが、有名塾に通うメリットは何だと思われますか?」
遠藤「全体的な推進力ですね。ご存知の通り、大手塾に来る生徒は概ね、受験意識が高いです。ですから、みんなで頑張ろう、合格しようという雰囲気に満ちていますね。」
中西「ご意見に大賛成です。私の生徒も例えばSAPIXをはじめ、四谷大塚、日能研、早稲田アカデミー等に通うのですが、受験への意識が素晴らしく高いです。これは大手塾を選んだ賜物と言っても過言では無いですね。」
遠藤「さすがの慧眼をお持ちですね。中西先生は具体的にどこ志望(学校)の生徒を教えることが多いのですか?」
中西「首都圏のTOP校に限っても、筑駒(筑波駒場)、渋幕(渋谷幕張)、開成、麻布、武蔵の男子御三家、桜蔭、女子学院、雙葉の女子御三家、あとは慶應、SFCも含めてですね、あとは早稲田。」
遠藤「すごい、オールマイティですね。ちなみに全教科を教えておられるのですか?」
中西「はい、基本的に。しかし指導力は遠藤様の足下にも及びませんよ(笑)、何より大手塾は圧倒的なリサーチ力と計画力で盤石を築き授業を一気に進めている。そこはどうやっても家庭教師が勝てないところですね。」
遠藤「ご謙遜を。ただ今仰ったように、大手塾には膨大なデータがあって、緻密な分析をもとに授業が進められていく。ここはやはり大手塾の最大のメリットと言えますね。さっきから不思議なのですが、大手塾を否定なさらないのですね。家庭教師にとって大手塾はライバルだと思うのですが(笑)」
中西「するどいご指摘ありがとうございます。確かに、他の一部家庭教師には大手塾を否定される方も一部おられますね。ただ、個人的には大手塾を肯定も否定もしないんです。塾も家庭教師も、合格するための手段だと捉えているんですよ。しかも私は未熟者ながら、どの業界にも光と闇があると思っているんです。ですから生徒や親御様には『大手塾の強みを利用出来るだけ利用すること』と口酸っぱく申しています。」
遠藤「なるほど。よくご存知ですね(笑)仰る通り、大手塾にも闇はたくさんあります。全ては申し上げられないのですが、恐らく中西さんも気付いておられるかと。」
中西「これはあくまで主観の概念なのですが、大手塾は出来る生徒を厚遇して、出来ない生徒を冷遇するって頭で公式を立ててるんですよ。これは良い悪いとかではなく、塾のビジネスモデルでは当たり前だと思っていて。」
遠藤「まさにその通りです。偏差値やクラスが上位の生徒には、すごく手厚く接する側面はあります、やっぱり。合格可能性が高い生徒にはこちらも必死になる。当然ながら大手塾は毎年の合格実績が命ですから、一人でも多くの生徒を難関校に入れなければいけない。ですが・・・ですね。」
中西「ですが、その一方で出来ない生徒は『お金を落としてくれるお客様』なんですよね?」
遠藤「はい、まさにお客様です。塾業界の言葉、よくご存知ですね(笑)ある意味、出来ない生徒の親が支払ってくださるおかげで経営がより成り立つので、そりゃ必死です。これもご存知だと思いますが、さらにお金を落とすようにやんわり薦めるわけです。」
中西「そうですよね。例えば、別の科目の授業を受けるよう薦めるとか、トップ校対策の特別授業を薦めるとか、夏期講習にいっぱい授業入れるよう巧みに薦めますよね。これ言っていいのか分からないんですけど、どうしてもダメなら会社系列の個別指導塾に通わせる、もしくは塾と個別指導を併用させるという手段もある。とにかく親御様にお金を払わせることが上手い!上手すぎる!いや、褒めてはないですよ。笑」
遠藤「いや・・・そこまでご存知とは、恐れ入りました(笑)」
中西「とんでもないです、これは経営的視点では当然ですから。変わってポジティブな側面で話していきたいのですが、遠藤先生はじめ塾講師はどのように生徒を鼓舞していかれるのですか?」
遠藤「基本的には叱咤激励ですね。『この問題が解けなくてどうする!』『去年、灘に受かった生徒はこれくらい秒で解けたぞ!』とか、『君たちは勝ち組だ!』とか。」
中西「やはりそうですよね。サウナかってくらい言葉が熱いと元大手塾の生徒から聞きます(笑)。一部の子供たちには、その環境が素晴らしく合うと思うんです。叱られても折れないどころか、このやろう!負けるか!自分は勝つんだ!って思える生徒が集っている。その全体的なエネルギー量が相乗効果となって、塾全体で合格へ導いていくと。さすが遠藤様も上手に子供をコントロールしていかれますね。これだけでも、素晴らしい手腕の片鱗を拝見した気がします。」
遠藤「いえいえ、ですが子供達のパワーは凄いものがあります。絶対受かる、誰にも負けないといった芯のある子が集まると、教師も圧倒されないようにもっと熱量を費やしてはっぱをかける。ところで、家庭教師側に集まる生徒は大手塾に通う生徒と何か違いはあるのでしょうか?」
中西「さすが、もう本当に最高の質問をありがとうございます(笑)まさに後々お話出来ればと思っていたと思っていた話題です。結論から申し上げると、全く違います。具体的に申し上げると、家庭教師に頼る生徒、親御様の9割が塾に通っている、かつ中学受験に少なくとも一抹の不安をお持ちなんです。ネガティブな心境や状況にある。『このままでいいのか・・・』と悩んでおられる。大手塾に通うけれども、授業に全然ついていけない。表現は悪いですが、大手塾の落ちこぼれが家庭教師業界に集いやすい訳です。」
遠藤「興味深いですね。どのように中学受験生をフォローなさるのですか?」
中西「もちろん先生によってアプローチは千差万別なのです。ただ、例えると私のアプローチは内科の診察と同じです。個人的にはまず主訴、つまり主観的な感覚や希望を受け止めてあげる。どの教科が苦手とか、どこの学校に受かりたいとか、塾のクラス分けテスト対策をしたいとか。次に、レントゲンやCTを撮るのと同じように、客観的に現状を見透かす。右肩が痛いと思ったら、実はそれをかばっている左肩が悪いケースと同じです。塾の模試を必ず提出していただいて、客観的にどの分野が苦手なのか、なぜ苦手なのかを俯瞰して緻密に分析していく。その上で、どのように学習計画を進めるか、ゴールまでどのくらいあるか、塾はどうしたら良いかを徹底的に話し合う。もちろん、最後にお決めになるのは親御様と生徒です。」
遠藤「とても分かりやすいです。実際に塾を辞めて成功する生徒もいるのですか?」
中西「もちろんです。塾を辞めて成績が急上昇する生徒も少なくありません。ただやはり、目的は何かを考えることは受験に限らず、どの選択肢でも大切だと思うんです。中学受験成功というゴールを見据えた時に、大手塾に通ったほうがいいと推察したら、自分から引き下がって担当を辞めることもあります。」
遠藤「ええ!自分から塾を薦めて辞める先生なんて、聞いたことないです。もちろん大手塾でも、退塾や家庭教師を薦める先生なんてほとんどいないと思います。」
中西「はい、いないと思います。生々しい話をしますと、私の収入が減るわけですから少なくともダメージはあるわけです。ですから私は変わり者なんです(笑)でも、中学受験までの数年間はあっという間ですよね。とくに精神的、身体的な変化も著しい。そのような激動の人生に、自分のエゴや収益ファーストで絶対に子供やご家庭の人生を狂わせる訳にはいかないというのが、私の信念ですね。キレイ事かもしれませんが、子供の人生は大人の決定で狂わせられませんよ。ただ、長期的に見て私が子供やご家庭の幸せの一助とならせていただけるのであれば、喜んでしかも必死にフォローさせていただく訳です。」
遠藤「はぁ・・・なるほど。常に俯瞰して考えておられるんですね。いや、常人じゃできないですよ、うん。話は変わりますけれども、家庭教師は塾の受け皿という側面があると思います。そのような点について、何かお感じのところはありますか?」
中西「仰る通り、現状は家庭教師は大手塾の受け皿の役割を担っています。これがもう・・・ここで言ったらクレームのメール1億通来ると思うんですけど(笑)、ものすごい・・・壮絶な案件が集まるんですよ。言っていいでしょうか?」
遠藤「はい、クレームは私は受け付けませんが(笑)壮絶と、仰いますと?」
中西「現実を申しますね。例えば、6年の11月時点、つまり受験2,3ヶ月前で偏差値40台なのに灘や開成に行きたい、行けると自信満々に仰るご家庭が驚くくらい多いです。受験レベルはおろか、小学校レベルの問題が解けないのに、『ネットやドラマで逆転合格出来るって見たから』と謎の自信を持つご家庭。逆転合格する生徒は、実際にいますよね?いますけど、統計的にもかなり少ない、確率的にもかなり低いにも関わらずです。中にはどう見ても少なからず何らかの学習障がいを抱えているにも関わらず、無理に子供に中学受験させる親御様も大勢いらっしゃって。それで、合格出来なかったら全部私、つまり家庭教師のせいにされて、激昂して解雇されるわけです。何度理不尽なお叱りを受けたことか。私はそう言った事案を何十回も経験しました。今は経験を積んで、そういった無理難題の案件は出来るだけ回避しています。もちろん家庭教師の力量不足は認めますが・・・なんだろう、『はじめてのおつかい』って番組あるじゃないですか?可愛い子供が、うぇ~んって泣きながらよちよち近所のお店に買いに行く番組。あれに例えたら、まだ近所の小さな八百屋にしかまだ行けない、しかもきちんと買い物できるか分からない子に、『飛行機乗ってちょっとアメリカのコストコ行って』っていうのと同じですよ(笑)」
遠藤「いやー(笑)、それは壮絶ですね。大手塾にもそういった生徒はいるはいるんですが、やはりお客様扱いなんですよね。いっぱい授業取っていただくことで、満足していただくんですよね。いや、満足してもらえると言ったほうが正確かもしれません。で、お金をいっぱい頂いて結果は不合格と。それでも保護者クレーム対応のマニュアルや共通認識があって、クレーマーもある程度は封殺できる。だから大手塾は守られる。そう考えると、中西先生含め家庭教師は理不尽なクレームを一挙に受けるところは辛いですよね。」
中西「はい。理不尽なクレームは少なくとも嬉しくないですね。だからこそメンタルコントロールは職業関係なく、人間には重要スキルだと思います。ただこれだけは確実に言えると思うのですが、『親が、いかに物事を客観視できるか』は中学受験でも必須だと信じているんです。例えば模試で点数が上がったら褒めてゲーム買ってあげる、点数が下がったら怒ってゲーム禁止にする、いやそうじゃないですよと。いかなる時も落ち着いて、偏差値や平均点を見ましょうよ。分野別の得点率を見ましょう、冷静に分析しましょうよ、ってなるわけです(笑)大手塾で成功する、もしくは塾にも家庭教師にも頼らず合格する家庭の親御様は、例えるなら教習所の教官ですね。子供は運転席でアクセルとブレーキを踏ませつつも、親は助手席でブレーキを握っている。しかもナビと同じように、現在地はどこで、何のために進んでいるのかを認識している。個人的には親力(おやりょく)と呼んでいますが、中学受験では子供の頭脳だけでなく、親の頭脳も大きく合否を分かつと考えています。見方を変えると、そう出来ないご家庭のためにナビの役割をするのが家庭教師の領分です。決して子供の代わりにハンドルを握ることはしませんね。」
遠藤「まさにその通りだと思います。結局、子供を育てる親の力に行き着くところがありますよ。私の塾でも仲間内でよく話すのは、なぜか中学受験で成功する子供の親は怖いくらい冷静で、失敗する親は一喜一憂するよねー、何か傾向あるよねーって。なるほど!はぁーいやー、なるほどです。答えは客観視なんですね。今すごく答えがクリアに見えて、すごく腑に落ちました。さすがとしか言いようがないです。」
中西「とんでもないです。そもそも絶対の正解は無いですし、あくまで私の経験則なので。もちろん客観視は中学受験の鍵の一つに過ぎないわけですが、必須条件ではあると思います。」
遠藤「いや、本当にそう思いますよ。個人的に伺いたいのですが、大手塾の中学受験生と中西先生が受け持つ中学受験生の違いはどこなんでしょうか?」
中西「難しいけど秀逸なご質問ですね・・・。僭越ながら、最終ゴールの視野の違いかもしれません。大手塾に通う子の多くは、目標校に通うことを最終目的としているところが多いと思うんです。いかに難関校に受かることが出来るか。それは全然否定しないんです。ただ、私の生徒には、『中学受験はゴールじゃなくて過程だからね』と言い聞かせてるんですね。実際、中学受験で成功したから人生の成功が約束されるわけでもないし、失敗したから人生が終わるわけでもない。これ話し始めたら朝までかかるんですけど・・・(笑)うーん、大切なのは言われた課題をこなすことじゃなくて、重要なのは自分で何度も失敗して考えぬく、自分の頭脳でもがくことだと信じているんですよ。そうですね・・・遠藤さんは算数の先生なので、受験算数の例えで考えると・・・うん、池の周りを2人で回る問題あるじゃないですか?A君は分速60m、Bさんは分速45mで2人同じ時点から池の周りを回る、みたいな。小学生にいつも言うんですが、『はぁ?こんなんしたら友達減るで!』って(笑)」
遠藤「確かに(笑)」
中西「A君には100人の友達がいました。そこで友達に、『別々に池の周りを回ってはじめて出会うのは何分後か計ろう』と言いました。すると、A君の友達は100人減りました。さて、A君の友達は何人でしょう?みたいな。あと、兄弟で家を出て、兄は徒歩で行って10分後に弟がチャリで追いかけます、何分後に追いつく?みたいな問題。バカかと。一緒に家出ろやバーロー、中学算数問題あるあるですが、途中で片方が勝手に図書館とか郵便局とか寄るなや、勉強出来ても人間出来なくなるぞって生徒に言ってます(笑)」
遠藤「それはさぞかし面白い授業ですね(爆笑)」
中西「極論を言えば、そんな計算は社会に出て使わないですよ。少なくとも私は、池の周り別々に歩こうなんて人と友達になりたくないですから(笑)だから私が最重要視してるのは、その子がどれだけで頑張ったか。苦難の中でもがいたか。極端な精神論は好きじゃないんですけど、頑張って頑張ってもがいた、極限まで頑張ったことがある人間はどの世界でも通用すると思っていて。逆を言えば、何も苦労せず難関校に受かった子は面白いくらい落ちこぼれていくし、苦労して第一志望は受からなかったけど別の学校で奮闘した子は面白いくらい伸びていく。科学的な相関があるかは分からないですが。子供達に大事なのは、一番に健康で心身共に安定すること。2番目に勉強でもスポーツでも趣味でも、何の分野でもいいから没頭すること。3番目に出来れば受かること。これが個人的なプライオリティですね。」
遠藤「すごく深い思考をされていますね。大手塾とスタンスはかけ離れていますが、個人的にはすごく同意です。」
中西「ありがとうございます。それにしても、家庭教師になって感じたのは、大手塾の圧倒的なブランド力ですね。大手塾に通うってことが今や、一種のステータスになっている。」
遠藤「分かります。私が教えてる塾でも、そうした戦略を取っていますから。」
中西「家庭教師業界で多い案件が、『大手塾のクラス分けテストで上位クラスに行きたい、塾内のテストで好成績を取りたい』という親御様の願いなんです。それくらい親御様や生徒にとっては、大手塾の上位クラスが何というか、輝いて見えるんでしょうね。それで実際に(親御様に)お話を伺うと、大手塾でとにかくクラスを上げることに最大目的になってしまっている。最終目的の中学入試合格というより、目の前のクラス分けテストになってしまってるんですね。」
遠藤「そうでしょうね。塾内では一つでも上のクラスに上がるように親や生徒に薦めて、叱咤激励していますから。これも塾からすれば、お客さんを離さない、いわゆる一種の戦略なんですよ。クラス分けテストに集中させることで、もちろん建前は学力の底上げを狙っているのですが、裏側では塾に依存させる、大手塾は何というか一種の新興宗教みたいにしてお金をどんどん出来るだけ払ってもらう手段になってる面はあります。」
中西「やはりそうなんですね。いえ、塾視点で見れば経営的に、至極当たり前で素晴らしい戦略なんですよ。私が運営するマッチングサイトも、使ってることが将来的に一種のステータスにならないかなって思うくらい羨ましいです(笑)ただ、その弊害も現場では色々と起きているわけです。」
遠藤「他にも家庭で何か困ったことが起きているのですか?」
中西「あまりネガティブな話に発展したくないのですが、現実として大手塾に通っている、子供に通わせていることを自身の価値にしているご家庭が少なくないんですね。かなり具体的に申し上げると、例えばよく家庭教師の応募に『子供がずっとSAPIXに通って、どこどこのクラスに通っています。サピでこんなテキストも毎日やっていて、毎日家でも何時間も勉強させています。サピ通ってるのに成績が上がりません。もっと勉強出来るようにしてください。』みたいな。いや、そもそもSAPIXに通って全員伸びるんだったらみんな行きますよ?そもそも、その一文いらなくない?って思うわけです。」
遠藤「確かに仰る通り。関係者が言うのも何ですが、大手塾に通って必ず受かるなんて保証は全く無いわけですからね。口が裂けても私は親御様に現実は言いませんし言えませんし、むしろ『入塾すれば合格へ近づきますよ、ほら、今年もみんなこれだけ合格してますよ、手厚いサポートしますよ』って言いますがね。」
中西「まさにそうなんですよね。あとは、中学受験の格差問題も深刻です。遠藤さんが教鞭を取っておられるのは(東京)都内じゃないですか。実際、中学受験が当たり前って雰囲気になってますよね?最初から同じ学校の子供たちが揃ってたりしませんか?」
遠藤「言われてみればそうですね。入塾時にほぼみんな同じ学校の友達がいて、最初から仲間が出来ていて、中学受験するのが当然という認識の子が多いですね。」
中西「東京の一部地域では、富裕層が住んでおられる。教育費にかける資金が潤沢にある。それで、クラスのほとんどが中学受験する小学校もあるわけです。逆に受験しないって言ったら、変な目で見られたり、仲間はずれにされる。逆もまた然りで、地方のほとんどでは、港区や中央区に比べると富裕層が少ない。教育費にかける資金は潤沢にはない。資金の問題だけじゃないですけど、クラスのほとんどが中学受験しない小学校が多いんです。逆に受験するって言ったら、変な目で見られたり、それこそイジメられたりする。ママ友からも仲間はずれにされる。」
遠藤「そうなんですね・・・その現実は知りませんでした。いやはや、井の中の蛙でした・・・。」
中西「いえいえ、遠藤さんはそれをご存知でなくても良いんですが、問題は子供達の側なんですよね。受験しないと仲間はずれにされる、親から怒られるから嫌々中学受験する子のどれほど多い子か。または、受験するとイジメられるから、家庭以外には学校にもママ友にも内緒にしておられるご家庭がどれほど多いことか。声を大にして言いたいのは、中学受験するのもしないのも自由ですし、周りがとやかく言うことではない、ということなんです。」
遠藤「なるほど。私は今日まで、みんな受験したくて来ていると思っていました。そういう苦しい思いをしている生徒も少なからずいるということですね。」
中西「そう思われるのも自然です。子供達は目的や背景は違えど、トップクラスで必死に勉強するわけですから。ただ、親の期待に応えて良い子を演じている子も少なくないのが現実です。親が喜ぶ顔を見たいために、自分を殺して勉強してトップ校に受かる。合格したら親は喜ぶけど、子供はその先・・・そこから先は残酷な実例が多いので、ここではとても言えないですね。ただ言えるのは、指示待ち人間になる可能性がかなり高いです。実生活で人から言われないと動けないっていう。」
遠藤「確かに、トップクラスにいる子はいわゆるザ・良い子が多いですね。小学生にして、大人みたいな感じに見える。でも一方でご指摘の通り、指示待ちの子供はとても多いです。あー、この子は勉強はすごく出来るけど、社会では使えないだろうなって感じる子供、実際多いですもん。次、この問題をやりなさい、この宿題をやりなさいって言われるまで、自分では何もしない。自分で何かを工夫しようとしない。これはかなり、かなり根深い問題かもですね。」
中西「かーなり根深いです。ですから、こうやって家庭教師と集団塾の垣根を越えて認識の擦り合わせをしたかった次第です。ですから、こうして遠藤さんのご意見を伺えて、本当に嬉しいです。今日の原点に立ち戻りますが、大手塾には大手塾の素晴らしさがある。そして、家庭教師には家庭教師の利点があると思います。ですから業界では互いは競合していても、それで子供が少しでも犠牲になりにくい世界を目指していきたいですね。」
遠藤「まさに仰る通りですね。いやはや、自戒の良い機会になりました。自分は自分の役目はありますが、子供の視点で考えることを時折やってみようと思います。ところで中西先生、うちの塾に来られませんか?きっとすぐ人気のトップ講師になられますよ(笑)。私も小学生の時、中西先生に教わりたかったですよ。ほんとに。これだけ視野と思考が深い先生に出会ったことがありませんから。」
中西「滅相もありません。最初に遠藤さんの足下に及ばないと申し上げたように、私にはそもそも、集団塾というスタイルは向いていないと思います。とてもとても遠藤さんのような素晴らしい先生、人格者にはなれないです。実は同じように大手塾への入閣を薦められることがあるのですが、ありがたいと思う一方で固辞しているんです。自分はその辺の一介の家庭教師に過ぎないと。ただ、その辺の一介の家庭教師ながら、信念を持った家庭教師だと。一寸の虫にも五分の魂ってやつですね(笑)お褒めの言葉を頂く際に毎回申すんです、『この仕事していなきゃプータロー』って。」
遠藤「すごい謙遜されてますね(笑)」
中西「いやいや、謙虚を忘れたら人間は終わりだと思っているんです。現代はお客様気質で『自分は客なんだからお前は言うこと聞けよ』という残念な風潮が散見されますけれども、ますます自分はいつまでも未熟者だと自覚しなければならないと思うんです。お客様で思い出しました。雑談になるのですが、そう言えば私は昔、ある飲食店で理不尽な扱いをされたことがあるんです。1時間経っても注文が届かない、自分より後の客にメニューが次々と運ばれていく、店員に聞いたら、『もう少々お待ちください』の一点張りっていう(笑)」
遠藤「それはダメだ。キレるでしょう?普通。私だったら怒鳴ってますよー。」
中西「怒りたくもなりますよね。その気持ちはとりあえず横に置いて、私はまず事実確認をしました。すると、注文を取ったのは新人さんで、ピーク時で混乱して注文を通すのを忘れていなかったみたいなんです。謝りに来てくださった新人さんには『こちらこそお忙しいところ申し訳ないです、注文だけ通していただければ』と申して、結局1時間半遅れでご飯を頂きました(笑)」
遠藤「ブチ切れなかったんですか!?」
中西「はい、その代わり、会計しようとすると店長さんがわざわざ頭を下げてくださったので、こう申し上げたんです。『いつもこの店を利用させていただいて、とても美味しい料理をいただいているだけに、今日のサービスは少々残念です。新人さんが対応されていたので、混乱したお気持ちは分かります。私は構わないのですが、今後他のお客様のご迷惑になると思いますので、教育を徹底していただけると嬉しいです』って笑顔で(笑)だって、怒っても解決しないですから。平和的にいきましょって感じで(笑)あ、でもお会計は無料になりました、ラッキー(笑)」
遠藤「それ、逆に怖いパターンですよ?笑」
中西「怖いらしいですね(笑)この話をすると、皆さんに同じ事言われます(笑)まぁでも今日の中学受験の話に通じるかもしれないですが、良い時も悪い時もいつでも客観視して、冷静でいることは大切なのだと思います。もちろん、感情的になることも時には大切です。喜んだり、泣いたりすることも、人生の糧になり得ますから。栄養と一緒で、心と思考の安定には何事もバランスが重要なのかもしれません。遠藤さんの穏やかな口調やお考えを垣間見て、見習いたいと強く思いました。本当にありがとうございました。」
遠藤「とんでもない、こちらこそ大変勉強になりました!いや、噂以上の方でビックリしました。こりゃたまげた。また良い機会に飲みに言って、公では話せない業界話を色々してみたいです。」
中西「こちらこそ!私も公式では話せない中学受験の裏側たくさんありますから(笑)遠藤さんは塾にとって貴重なトップ教師ですし、皆にとっても大切な方であられますから、どうかお身体にお気を付けください。本日はどうもありがとうございました!」
Interview by 中西悠樹(代表)
Transcribe by SENSE8事務局
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